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り崩していく形で事業を行うことにした。
数多くの村おこし町おこしの中で、文化的事業が経済効果にまで結びついていった例として、熊本県阿蘇郡波野村の「中江岩戸神楽三十三座」完全復元徹夜上演、同じく長陽村の「長野岩戸神楽三十三座」完全復元徹夜上演、熊本県上益城郡清和村の「文楽人形浄瑠璃芝居」の復元上演、文化と福祉を結びつけた「こころコンサート」、文化を通して環境間題に挑戦した「川は流れる」シリーズと、地域おこしの手掛り発見の手段として、熊本県球磨郡球磨村大瀬の「文政三年棒踊り」と、これらの活動を下支えした「日常塾クラブ」を、要約して列記する。

 

(1)熊本県阿蘇郡波野村「中江岩戸神楽三十三座」完全復元徹夜上演

阿蘇地方には石見国を発祥とした岩戸神楽三十三座が、豊後国や日向国を経由して、江戸時代から大正初期頃までに流入していた。
しかし、完全に上演すれば、徹夜で20時間以上を要したこの神楽も、過疎による保存会員の激減で、三十三座のうち、五ないし八座を演ずるのみとなり、数年をまたずして滅亡することが予想されていた。
熊本県立劇場は阿蘇地方の町村を巡歴しながら、辛抱強く各保存会に完全復元上演を提案した。
岩戸神楽だけではなく、劇場が行ったすべての基金事業による地域おこしでは、参加を表明した団体、グループ、個人に対して、費用は劇場が金額負担すること、可能な限りテレビで放映する、上演は完全にビデオ収録し、後世においても再興が可能のように、記録したテープを当該市町村か保存会に寄贈するの3点であった。
劇場の呼び掛けに応えて波野村中江の神楽保存会が、村と協議の末に復元を申し出た。
しかし、かっては50人いた保存会員が15人ほどしかいないために、とても1晩での上演は、体力的に数多くの出演場面をこなすのは不可能であるので、2晩か3晩に分けさせて戴きたいと要望したが、劇場側はあくまでも先祖が作った神楽に出来るだけ近い形で上演し、農村にはまだこれだけのエネルギーがあるのだという事実を、NHKの衛星放送で、21時間の生中継というNHKにとっても日本のテレビ界にとっても、空前の中継放送によって、全国の農民に訴え、さらに過疎の農村の実態を都会の人に知ってもらい、こうした問題を含めて、今後の地方文化の発信の源を作ろうと説得し、努力をすれば、人間は必ず良い結果であると信じると、誠意をこめて話し合いを重ねた。

 

 

 

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